ガイドラインに準じた融資制度及び手法について 2/2

カテゴリ:経営者保証

 

 

前回は経営者保証ガイドラインに準じた融資制度についてお伝えしました。

 

今回は、ガイドラインに準じた融資制度及び手法について

経営者保証ガイドラインに準じた融資手法」についてお伝えします。

 

 

 

経営者保証ガイドラインに準じた融資手法

 

 

経営者保証ガイドラインに準じた融資手法について見ていきます。

 

融資手法には、「停止条件または解除条件付保証契約」と、「ABLとがあります。

 

 

 

停止条件または解除条件付保証契約について

 

 

主たる債務者が、特約条項(コベナンツ)に抵触した場合に保証債務の効力が

発生する保証契約を停止条件付保証契約と言います。

 

 

反対に、コベナンツを充足する場合に保証債務が効力を失う保証契約を

解除条件付保証契約と言います。

 

 

金融機関等については、コベナンツの設定により、経営者に単に保証債務を

負わせる場合よりも、具体的かつ詳細な経営の規律付けを行うことが

可能になると考えられます。

 

 

また、経営者にとっては誠実に事業を行う限り、負担の大きい保証債務を

負わなくて済むことになります。

 

 

一方で、コベナンツに抵触する事由が存在しないかを確認するため、

通常の保証契約よりも継続的なモニタリングを要するので、

金融機関等の管理面での負担は大きい。

 

 

また、解除条件付保証契約については、解除条件充足による保証契約失効後の

経営者のモラルハザード防止の観点から、解除条件の内容や成就の時期について

検討する必要があります。

 

 

 

ABLについて

 

 

ABL(Asset Based Lending)とは、企業が保有する売掛金などの債権や

在庫・機械設備等の動産等を担保とする融資手法を言います。

 

 

ABLは、主たる債務者にとっては、売掛金や在庫を担保として活用することにより、

信用力を補完し、資金調達枠を拡大することになります。

 

 

ABLの利用は、経営者保証に依存しない融資を促進することにつながり、

ガイドラインの趣旨にも適すると言えます。

 

 

また、ABLの設定により、主たる債務者の在庫や売掛金等を継続的に

モニタリングすることを通じて、主たる債務者の事業の状況を正確に

把握することが可能になるため、金融機関等においては、

信用リスク管理の強化にも繋がると考えられています。

 

 

一方で、ABLは金融機関等において主たる債務者の財産状況の把握の為に

継続的なモニタリングが必要であり、主たる債務者においても在庫や

売掛金等の管理負担は増加することとなります。

 

 

また、ABLの利用により、経営者保証を全く徴求しないこととした場合、

経営者によるモラルハザードの問題が生じる可能性も否定できない為、

停止条件付保証契約を組み合わせるなどして経営者への規律付けを行う

必要がないか検討をする必要があります。

 

 

 

まとめ

 

 

第6回コラムは「ガイドラインに準じた融資制度及び手法について」2回に

分けてお伝えさせて頂きました。

 

 

実務として融資環境においては、「経営者保証ガイドライン」の認知と比例しており、

まだまだ普及しているとは言えません。

 

 

現にABLの取組に関しては平成20年に経済産業省が「ABLガイドライン」

制定されましたが、運用面での負担が大きい(モニタリング等の問題)ため、

融資残高としてはあまり伸びていないのが現状です。

 

 

近年、リース会社等や電子債権の普及によりABL融資が広がりを見せていますが、

中小零細企業が利用できる状況になるまではまだまだ時間がかかると考えられます。

 

 

次回は最終回「ガイドラインは世の中を変えるのか」をお送りさせて頂きます。