第7回(最終回) ガイドラインは世の中を変えるのか

カテゴリ:経営者保証

 

コラム「経営者保証ガイドラインが会社を変える」

 

 

第7回(最終回)のコラムタイトルは「ガイドラインは世の中を変えるのか」です。

 

 

 

経営者保証ガイドラインは世の中を変えるのか

 

 

今回で最終回になります。

最後に、経営者保証ガイドラインのまとめを行い、企業の現状によって、当ガイドラインをどう活用していったらよいかを考えてみます。

 

 

経営者保証ガイドラインは、大きく2つの柱がありました。

 

1.経営者が保証人とならずに融資を受ける要件が明確化された。

 

2.保証人が、保証している企業の債務整理を行うにあたって、自身の保証債務をどう整理していくかが明確化された。

 

 

まず「経営者が保証人とならずに融資を受ける要件が明確化された」ことについて。

 

経営者が保証人とならずに新たな融資を受ける、もしくは既存の融資の保証を外すには、次の5つの要件が求められます。

 

① 法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている

② 法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない

③ 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る

④ 法人から適時適切な財務情報等が提供されている

⑤ 経営者等から十分な物的担保の提供がある

 

次に「保証人が、保証している企業の債務整理を行うにあたって、自身の保証債務をどう整理していくかが明確化された」ことについて。

保証人が保証をしている企業が債務整理を行うにあたって、合わせて保証債務をどう整理していくのか、保証人にはどれだけ資産を残すのか、ガイドラインが定められました。

 

 

事業を継続するのであれば安定した事業継続のためにどれだけ資産を残すのか?

 

事業を清算するのであれば経営者の生活再建のためどれだけ資産を残すのか?

 

が検討されます。

 

 

 

では経営者保証ガイドラインを、それぞれの企業の現状により、どのように活用したらよいのでしょうか。

 

 

1.経営が順調な企業

 ・現経営者の保証を減額、免除するため、経営者保証を外す3要件を満たすように中長期計画を立てて進めていき、

  銀行に交渉していく。

 

 ・後継時に後継者が保証人となることによる負担をなくすため、後継時までには現経営者が保証人から外れることを

  目指し、経営者が保証人ではない状態で経営を継ぐ。

 

 ・担保により融資が保全されている部分があれば、その部分の保証を外れるところから経営者は銀行へ交渉していく。

 

 

2.経営が厳しく、再生を目指す企業

 

 ・まずは経営改善を行って資金繰りがまわるようにしていく。

 

 ・企業の債務を整理することとなった場合、保証人である経営者は事業継続のために一定の資産を残せるよう

  経営改善計画を立てて銀行と話し合っていく。

 

 ・後継者には安易に保証人にして過大な負債まで承継させないよう、経営の継ぎ方を今のうちから考えておく。

 

 

3.倒産を選択する企業

 ・保証人である経営者が生活を再建し再チャレンジの道を残せるよう、一定の資産を残す道を探る。

 

 

なお現状の財務状況により、企業はどこまで経営者保証ガイドラインの活用を行うか、まだ銀行において事例が積み上がっていない状況の中で、私の考える一定の目安を次に述べます。

 

 

1.実質無借金の企業(有利子負債から現金預金を差し引いたら0となる企業)

 

 ・経営者保証を外すための3要件を満たした上で、既存の保証人を外すよう銀行へ交渉していく。

 

 

2.実質自己資本比率20%以上の企業

 (自己資本比率は、決算書の貸借対照表上で不良資産を除いた実質資産で考えた時、純資産÷総資産で計算する)

 

 ・経営者保証を外すための3要件を満たした上で、これから新たに受ける融資を経営者保証なしで受けられるよう、銀行へ交渉していく。

 

 

3.実質自己資本比率20%未満の企業

 ・経営者保証を外すための3要件を満たすこと、そして実質自己資本比率20%以上となるよう、経営改善を行っていく。

 

 

経営者保証ガイドラインは2月にスタートしたばかりで、各銀行においては、他の銀行はどうするのか様子見であるのが現在です。

しかし金融庁は今後、経営者保証ガイドラインの活用を銀行に監督・指導していくため、月日が立つにつれ、各銀行の方針と、当ガイドラインを活用する動きが見えてくることでしょう。

融資を受けている中小企業の8割以上は経営者が保証人となっていますが、そこからの問題として、経営者の財産への負担と、保証人となることをいやがって後継者が現れにくい、ということがあります。

 

この現状を、経営者保証ガイドラインが変えていくことが期待されます。