「金融機関における決算書・担保・保証人の位置づけ」(1)

カテゴリ:銀行融資

 

コラム「中小企業と金融機関」融資編

 

 

本日からは、「中小企業と金融機関」融資編と題しましたコラムをスタートします。

 

中小企業の経営者の悩みの中で最も多いとされているのが「資金繰り」です。

その中でも融資を含む金融機関取引で悩まれている経営者様も多いのではないでしょうか。

では、なぜ金融機関との取引で悩まれる経営者様が多いのでしょうか?

それは経営者自身が金融機関のことについての情報が乏しいことによる不安が大きな原因ではないかと考えます。

金融機関と対等に話ができるように少しでも金融機関の考え方などをお伝えできればと思います。

 

それでは第1回目コラム「金融機関における決算書・担保・保証人の位置づけ」をお送りします。

 

 

融資審査の材料となる決算書・担保・保証人

 

決算書・担保・保証人…

これらは、銀行が融資審査を行うときに、審査材料として検討されるものです。

では、これらの項目は融資審査において、どのように見られているのでしょうか?

銀行の審査における優先順位としては、

1.決算書

2.担保

3.保証人

という順番です。

なお融資審査の可否は、決算書で8割が決まります。

 

 

1.決算書

 

決算書には、貸借対照表と損益計算書がありますが、貸借対照表で銀行員が何よりも目がいくところは、「純資産」です。

銀行員の考えとしては「純資産」は、プラスであることが必須です。

マイナスであれば、債務超過と言われ、融資は困難となります。

また、純資産がプラスでも、資産の部の各勘定科目にて資産価値のないものがあり、実質の資産で見て、純資産がマイナスとなれば、実質債務超過と見られ、融資は困難となります。

例えば、純資産が500万円、資産の部の売掛金が5,000万円という企業が、売掛金のうち600万円が不良資産(回収不可)で、資産価値のある売掛金が4,400万円しかないのであれば、純資産は500万‐600万で▲100万円となり、実質債務超過となります。

次に損益計算書で、銀行員の目が向くところは、「営業利益」「経常利益」です。

当期純利益ではありません。当期純利益は、その期だけの利益・損失である特別利益・特別損失に左右されやすく、銀行の見方としては、参考程度に留まります。

「営業利益」「経常利益」のいずれかがマイナスであると、融資は受けにくくなります。

2期連続の営業損失あれば、融資は困難になります。

このように、融資審査においては、決算書が8割のウエートを占めます。

 

 

2.融資審査

 

その次に、融資審査において見られるのが、担保です。

ただ、決算書の内容が良ければ、担保は重視されません。

無担保でも十分に融資を受けることができます。

決算書の内容が芳しくないときに、融資審査の補完の材料とされるのが、担保なのです

逆に、決算書の内容が悪ければ、担保があっても、融資を受けることは困難になります。

あくまでも、担保は補完的なものです。

なぜなら、もし貸し倒れとなってしまったら、不動産が担保に入っていれば、その不動産を競売することになります。

銀行が見ていた金額では売れず、貸し倒れ金額を満たすことができないかもしれません。そもそも担保の競売手続きは、銀行にとっては事務負担が大きくなってしまいます。

融資審査において、担保は決算書を補完するものでありますが、決算書の内容が悪ければ、担保だけで融資を受けることは困難と言えます。

 

 

3.保証人

 

保証人は、融資審査においてはあくまでも参考程度にしか見られません

銀行融資において、多くのケースでは、会社の代表者のみが保証人になることでしょう。

なぜ代表者を保証人とするのでしょうか?

例えば貸し倒れになった場合に備えてその代表者の資産をあてにするよりも、融資の返済の責任を代表者に持たせる意味合いの方が強いのです。

代表者の他に、いくら資産を持っている保証人が付いたとしても、もし貸し倒れになった場合、保証人の資産もなくなっていることが多いですし、また保証人の資産で必ず補填されるとは限りません。

このように、決算書の内容が悪ければ、いくら担保があっても、いくら保証人がいても、銀行の融資は受けられないのです。