銀行が融資しやすい企業になる秘訣(4)
カテゴリ:銀行融資
コラム「中小企業と金融機関」融資編
今回のコラムは「銀行が融資しやすい企業になる秘訣」です。
債務者区分と銀行同士のにらみ合い
ここまでは銀行からの融資が期待できる会社に関係する方策を紹介してきました。
だが、すでに資金繰りが厳しく、銀行から融資が受けにくくなっている会社はどうしたらよいのでしょうか?
融資先企業では債務者区分が銀行から付けられ、銀行独自で行う信用格付はこれと連動しています。
信用格付とは
こちらは各銀行によって多少違いますが、ある銀行の例です。
1~6格までが債務者区分「正常先」
7~8格までが「その他要注意先」
9格の「要管理先」
10格以下の「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」
になると、銀行からの融資の可能性はもはや不可能です。
実質的には「その他要注意先」までがぎりぎりのボーダーラインだと心得ておきましょう。
では、「その他要注意先」と「要管理先」の問に横たわるものは何なのでしょうか。
債務履行の3ヵ月以上の延滞があったり、または貸出条件の緩和を受けているか否かになります。
ただ、細かい区分や判定プロセスについては銀行によって基準が異なる為、まずは取引担当者に直接聞いてみることも必要です。
銀行員は秘密にしたがりますが、それは不当な評価に対する企業からのクレームを恐れているからです。
企業側の熱意とともに、「実態を聞いて経営努力につなげたい」と正直に理由を伝えれば、「内密に」という約束の下に教えて頂けることが多いです。
そもそも銀行は融資先に良い格付でいて欲しいと思っているものです。
融資先の格付が悪くなると、それだけ貸倒引当金を積まなければならず、今度は自行の財務状況が悪化するからです。
企業側が区分を引き上げるたねの努力を自ら行ってくれるのなら、銀行も協力は惜しまないでしょう。
また、金融庁の「金融検査マニュアル別冊」も参考にすると良いでしょう。
格付が上がった実例が27個列挙してあり、具体策を講じるのに非常に役立ちます。
金融庁のサイトに掲載されている別冊←ご覧になりたい方はこちらをクリック
具体的な事例
例えば、経常赤字や当期赤字のため要注意先の可能性がある場合、「一過性の赤字」もしくは「時期決算において赤字解消確実」ということを、資料を用いて説明しましょう。
銀行に材料、すなわち判断の根拠を提供することは格付を上げる良い方法です。
そして、融資が受けられない状況で資金繰りを回すには、返済を止める、すなわちリスケジュールを申し込むというのも1つの選択肢であると考えられます。
だが、必要のないときにリスケジュールに走ってしまっては、むやみに債務者区分を落とすことに繋がります。
タイミングを誤らないためにも、銀行の融資スタンスをあらかじめ取っておくことが重要です。
例えば、プロパー融資を申込んだ際、そこで十分な金額が出たか否か。
出なかった場合、保証付融資でプロパー融資の不足額を補填する金額が出たか否か。
経常黒字の時と経常赤字の時でそれぞれ変化はあったのか。
こうした事例をシミュレーションに組み込むことで、リスケジュールの検討のタイミングを割り出しましょう。
ここで同時に気を付けておかなければならないのが、銀行同士のにらみ合いです。
各銀行の得意先係は、融資先の「他行借入明細」を3ヵ月ごとに必ず入手することを義務付けられています。
これはまさしく他行が融資を引いていないかチェックするために入手しています。
銀行員はリスクを恐れるため、引くときは各行示し合せたかのように一斉に手を引いてしまいます。
企業にしてみればたまったものではありません。
この危機を回避するためには、不審がられる要素をつくられないよう、自社で明細を絶えず確認しておくことです。
特に融資額だけでなく、各行のシェアの推移にも気を配らなくてはなりません。