融通手形の恐ろしさ(2)
カテゴリ:銀行融資
コラム「中小企業と金融機関」粉飾決算編
今回のコラムは「融通手形の恐ろしさ」です。
銀行は融通手形を割引しない
銀行は当然、融通手形を割り引くことはしません。
ただ、割引に持ち込まれた手形が、商行為に基づく正当な手形なのか、それとも融通手形なのか、見分けることは銀行にとって、なかなか難しいものです。
私は、銀行員時代、融資係の時に、融通手形の見分け方を徹底的に上司から叩き込まれたものです。
お金のプロである銀行員は、次のように融通手形を見分けます。
融通手形を見分ける5つのポイント
融通手形を見分けるポイントは
① 端数のない手形
② 売上規模に比べて金額が大きい手形
③ 商流の流れが不自然な手形、業種の繋がりのない手形
④ 振出人の住所と支払銀行の支払地が離れている手形、メインバンクでない銀行の手形
⑤ 振出日や支払期日が手形振出し企業のいつもの場所と異なる
の5つです。
それでは個別に見ていきましょう。
端数のない手形
「500万円」「1,000万円」のように端数のない手形。
あたかも銀行からお金を引き出すために振り出された融通手形のように見えます。
売上規模に比べて金額が大きい手形
例えば、月商1,000万円の会社が、1枚で800万円の手形を振り出す。
例えば、月商2,000万円の会社が、2,500万円の手形を持っていて割り引こうとする。
明らかに不自然です。
商流の流れが不自然な手形、業種の繋がりがない手形
例えば製造業で、材料を仕入れる場合、製造業から材料の卸売会社へ手形を振り出すことになります。
逆に製造業が、材料の卸売会社から振り出された手形を割引するのは不自然です。
また、業種的に、なぜ取引があるのだろうという手形、例えば衣類小売店の手形を建材卸売業が割り引こうとする場合、融通手形が疑われます。
振出人の住所と支払銀行の支払地が離れている手形、メインバンクではない銀行の手形
融通手形を振り出す企業は、銀行に不正とばれたくないという気持ちが働き、自社の住所とは遠く離れた銀行の支店で手形を振り出すことが可能であれば、そうしてしまうものです。
また、メインバンクでない銀行の手形も、メインバンクに不正を知られたくないという気持ちでそうなるのかもしれません。
振出日や支払期日が手形振出し企業のいつもの場合と異なる
例えば、いつも月末日が支払日の企業の手形が、20日が支払期日であると、不自然となります。
融通手形の振り出し相手の都合により、支払期日を変えたということが疑われます。
まとめ
銀行はどのように融通手形を見分けるか、お伝えしました。
手形を振り出すことができる会社は、知人の会社を助けようと、融通手形を振り出してはいけません。
資金繰りが厳しい会社の方も、手形を振り出すことができる知人の会社を頼ってはなりません。
また銀行は、融通手形に手を出している(振り出す方もそれを割り引く方も)ことが分かったら、その企業を要警戒することになります。
融通手形、これは銀行にとって大問題の種なのです。
融通手形は絶対にやってはいけません。