融資の一本化とリスケジュール(1)

カテゴリ:銀行融資

 

 

コラム「中小企業と金融機関」銀行取引対応編

 

 

今回のコラムは「融資の一本化とリスケジュール」です。

 

 

まずは具体的事例から

 

 

私の会社に時々あるのが、次のような相談です。

 

 

「現在A銀行で1,500万円、B銀行で1,000万円、C銀行で500万円の借入があるが、この3行の借入を、どこか1つの銀行で一本化したい」

 

 

その企業がよほど優良企業であるが、これら借入総額を上回る担保を提供できるのであればまだしも、そうでなければ、すべての銀行からの借入を1行にまとめて借り換えすること、これは現実的ではありません。

 

 

なぜ借り換えしたいのか、経営者に理由を聞くと

 

①    毎月の返済金額をもっと楽にしたい

 

②    1つの銀行にまとめた方が便利

 

というような答えが返ってきます。

 

 

確かに毎月の返済金額を、借り換えによって減額することができます。

 

しかし、借り換えを行うにしても同じ銀行内で行うべきです。

 

 

例えば3つの銀行の借入のうち、A銀行からの1,500万円の借入の内訳は、次のとおりとします。

 

 

900万円(残り返済回数は30回・毎月30万円の返済)

400万円(残り返済回数は20回・毎月20万円の返済)

200万円(残り返済回数は10回・毎月20万円の返済)

 

 

毎月合計70万円を返済しています。

 

 

これに300万円上乗せして1,800万円で全部を借り換えし、返済回数を5年60回とすると、毎月返済金額は30万円となり、返済金額は抑えられ、借り換えの効果がでます。

 

このように、借り換えは同じ銀行内で行うべきです。

 

銀行にとって別の銀行はライバルです。

 

貸はがしにあっている企業ならまだしも、そうでない企業において、自分の銀行の融資を他行に借り換えられるのは、借り換えられた銀行にとって恥となります。

 

融資による利息収入は、銀行にとって一番の収益源であり、融資を別の銀行に借り換えられると、その収益源がなくなります。

 

そして企業と、借り換えされた銀行との関係は悪化します。

 

私も銀行員時代、自分が担当する融資先企業に出していた融資が別の銀行に借り換えられると、上司から怒られたものでした。

 

また、融資を受ける銀行は1つの銀行に集約したほうが良い、と考える経営者がいますが、融資を受ける銀行は、できるだけ多くすることが基本です。

 

その理由は、次のとおりです。

 

 

①    1つの銀行が1社に対して行える融資は、リスク分散の観点から限度がある。

 

②    1つの銀行だけだとその銀行が融資を渋ったときに打つ手がなくなる。

 

 

(ここで融資を受けていない銀行に申し込む手がありますが、新規企業に対しての銀行の審査は厳しいものです。特に既存の銀行から融資を渋られている企業であればなおさらのことです。)

 

また複数の銀行から融資を受けていると、銀行から融資を勧められるが多い企業であれば、その銀行間での融資金利の競争が起こります。

 

1つの銀行としか取引していない企業であれば、その銀行から言われる金利が一般的な金利だと思ってそのまま受け入れがちですが、複数の銀行から融資を受けている企業においては、その銀行間の金利競争が起こりますので、金利は下がっていきやすくなるからです。

 

次回は今回の続きで「リスケジュールと一本化の違い」についてお伝え致します。