融資資金が外に流れるとは(1)
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コラム「中小企業と金融機関」銀行取引対応編
今回のコラム「融資資金が外に流れるとは」です。
融資を受けた資金が外に流れるとどうなるか
貸借対照表を見ると、仮払金・立替金・貸付金などの勘定科目で、外部へお金が流れてしまっているケースを見ます。
あなたの会社の勘定科目の明細を見てください。
次のようになっていませんか?
(例1)
仮払金 5,400,000 (仮払金の明細) 代表取締役A 3,300,000 従業員B 2,100,000 |
(例2)
貸付金 35,000,000 (貸付金の明細) 関係会社C 28,000,000 代表取締役D 7,000,000 |
このように、仮払金・立替金・貸付金などで外部へお金が流れていると、問題が起きます。
それは次の3つです。
1.決算書で貸借対照表の評価が低下する
2.金融機関から資金使途違反に見られる
3.資金繰りが厳しくなる
それでは個別に詳しく見ていきましょう。
決算書で貸借対照表の評価が低下する
貸借対照表に計上されている資産は、資産価値があってこそ、その金額どおり評価されるものです。
返ってこない仮払金・立替金・貸付金は資産価値がないです。
このような価値のない資産は、金融機関では実質価値は0円と見て評価します。
例1ではAとBに仮払金として支払っている金額が返ってくる見込みがなければ、仮払金5,400,000円の実態価値は0円と見られます。
そして貸借対照表の表面上は純資産が2,500,000円あっても、5,400,000円を差し引きすれば実態の純資産は△2,900,000円となり、この企業は実質債務超過、ということになります。
例2では関係会社への貸付金があります。
この場合、金融機関は、貸付金28,000,000円はその資産価値があるのかどうかを見ます。
そこで関係会社Cの決算書を提出するよう要求されます。関係会社Cの決算書を見て、そこからお金が返ってくる見込みがないと金融機関が判断すれば、この28,000,000円の実質価値は0円と見られます。
金融機関から資金使途違反に見られる
そもそもこのような仮払金・立替金・貸付金がなぜ発生するか。
次のケースが考えられます。
・社長や従業員、関係会社でお金が必要となり、本体の会社から貸付を行った。
・経営者からバックマージンを取引先に支払う必要があり、オモテで経理処理できないから社長への貸付とした。
・会社と社長の財布が混同されていて、会社から持ち出した資金を社長個人の生活費などに使い、
後の経理処理で貸付となった。
いずれも、金融機関が納得しそうな理由ではありません。
また本体の会社に返済される裏付けもありません。
このように、仮払金・立替金・貸付金に計上される金額は、それが発生する経緯も分かりにくいですし、返ってくる見込みも少ないとみなされ、金融機関は不良資産とし、実質価値を0円と見ることが多いです。