融資資金が外に流れるとは(2)

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コラム「中小企業と金融機関」銀行取引対応編

 

 

今回のコラム「融資資金が外に流れるとは」です。

 

 

金融機関から資金使途違反に見られる

 

 

前回の続きからです。

 

このような資産がある一方で、金融機関から借入金がある企業。

 

例えば例2では、貸付金が35,000,000円ある一方で金融機関からの借入金が80,000,000円あれば、金融機関は「もしかして融資した資金は、関係会社や社長に、また貸しされたのではないか。」という見方をしかねません。

 

 

 

E銀行からの融資80,000,000円

→ 例2の会社が借入 → 関係会社Cへ貸付金として28,000,000円流用

            → 代表取締役Dへ貸付金として7,000,000円流用

 

 

 

 

このように見られると、融資を出した金融機関は資金使途違反として判断しかねません。

 

金融機関は、企業から融資を申し込まれたら、その資金の使い道は必ず聞きます。

 

それは資金使途と呼ばれるものです。

 

金融機関では、また貸しのための融資はだしません。

 

なぜなら関係会社や社長個人が金融機関から直接借りればよいからです。

 

しかし社長個人や関係会社で融資を受けられないのであれば、融資を受けやすい会社で資金を調達してそれを社長個人や関係会社にまわせばよいという安易な考えをしがちです。

 

しかし実際にそれをやってしまうと、このように決算書上ではっきりと現れます。

 

それを見た金融機関は、融資を出した資金をこの会社は社長個人や関係会社への貸付として流用したのではないか、と見てきます。

 

それがはっきりすると資金使途違反となります。

 

資金使途違反を行った会社に金融機関は厳しいです。

 

新規融資を受けることが困難ともなりかねません。

 

このような安易なことをやったばっかりに、今後の金融機関からの資金調達に大きな制限がなされてしまえば元も子もありません。

 

 

資金繰りが厳しくなる

 

 

会社経営では、会社のお金と個人のお金を混同すると、資金繰りがおかしくなっていくものです。

 

社長のお金と、会社のお金は混同してはいけません。本体の会社と関係会社との間でも同じことが言えます。

 

社長から会社へお金をまわすのならまだしも、会社から社長へ、もしくは本体の会社から関係会社へ、お金をまわしてはいけません。

 

資金が必要であったら、社長、もしくは関係会社で調達すべきであり、調達できないのなら資金はないものとして考えなければなりません。

 

それができなければ、本体の会社から資金が流出し、その会社の資金繰りは悪化です。

 

さらに困ったことに、今まで述べたように金融機関から、評価の低下と資金使途違反の疑いが重なり、金融機関から融資を受けることが難しくなってきます。

 

そうなれば、その会社の資金繰りは一気に悪化します。

 

そもそも企業は、金融機関から受けられる融資の量は限られています。

 

月商の3ヶ月分以上の借入があれば借入規模は多いと見られ、月商の6か月分以上の借入があれば借入規模は過大であると金融機関は見てきます。

 

例えば年商6億円、月商5,000万円の会社は、借入が4億円あれば月商の8か月分の借入金があり、借入規模は過大であると見られるのです。

 

金融機関から借入した資金が社長や関係会社に流れていて本体の会社の事業に使われなければ、その分、追加で融資を受ける余力もなくなってきます。

 

 

仮払金・立替金・貸付金を発生させない努力を

 

そもそも仮払金や立替金は、一時的に社長や従業員などに仮払いしたり、立て替えしたりする時に発生する勘定科目であり、その仮払いや立替が精算されてすぐに消える性質のものです。

 

それが長い間残っていたり、大きい金額であったりするのは、経営上、おかしいと思わなければならないです。

 

また貸付金含めて、経理上、どこに計上したらよいか不明な時、とりあえず仕訳しておくことに使われやすい勘定科目です。

 

本当は資産価値がないのに、計上しておけば貸借対照表の純資産が増加する、粉飾決算にも使われやすい勘定科目です。

 

しかし金融機関はそこをしっかりチェックしています。

 

仮払金・立替金・貸付金は極力発生しない努力が必要です。