信用保証協会による代位弁済の求償権放棄について
カテゴリ:銀行融資
前回は、「信用保証協会による代位弁済された後の対応について」お伝えしました。
今回は、その信用保証協会が代位弁済による求償権を放棄する場合についてお伝えします。
求償権の放棄
信用保証協会が、求償権の放棄、つまり信用保証協会に移った債権を、
その後は免除することがあります。
しかしそのためには、大変厳しい基準があり、
信用保証協会はむやみやたらに求償権を放棄してくれるものではありません。
求償権の放棄に係る基準については次の通りです。
【 次に挙げるすべての基準を満たすもの 】
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1. 求償権元本の放棄を行わなければほぼ確実に経営が破綻すること
2. 経営姿勢等が次に挙げるすべての基準を満たすこと
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債権者に対し必要な情報を開示しており、
遊休資産の処分等の自助努力を誠実に行っていること
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企業の事業継続が地域産業全体にとっても利益があると認められること
3. 当該中小企業者に係る再生計画等が次に挙げるすべての基準を満たすこと
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再生計画等において、各金融機関に求められている貸付金等の
放棄等の権利変更が合理的かつ公正衡平なものである等、
適正な内容・手続きを踏んで策定されたものと考えられ、
かつ各金融機関が再生計画に同意する意思を表明していること
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従業員が再生計画等に協力的であること
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再生計画等の合理的なモニタリングを行われる等、再生計画等の円滑な実施が期待でき、
かつ、再生計画等の成果(経常損益の黒字転換、債務超過の解消等)が
適正な期間内に達成される見通しであること
求償権消滅保証制度
信用保証協会に求償権があれば、信用保証協会保証付融資は
新たに受けようとして受けられません。
また企業の決算書の負債の欄を見れば信用保証協会の名前が出て、
信用保証協会の求償権が残っていることが分かるため、それを見た銀行は警戒し、
プロパー融資(信用保証協会保証付融資でない融資)を受けることも難しくなります。
このような求償権が残っている企業に対し、その企業が自力再生の見込みがあり、
今後の事業計画や債務弁済計画を含めた経営改善計画が策定され、
その計画が外部の専門家や有識者で組織された再生審査会で承認された場合、
その求償権を借り換えるための保証である求償権消滅保証があります。
具体例
例えばA社は3,000万円を代位弁済されて、
頑張って返済を続けて残り1,800万円となったところで、
これを借り換えして通常の信用保証協会付融資に戻し、
銀行からの融資を正常化するものです。
銀行からの融資を信用保証協会に代位弁済された企業が、
頭に入れておいたほうがよい3つのこと
・遅延損害金の減額
・求償権の放棄
・求償権消滅保証制度
に関して、私どものコンサルティング先でも、こうした事例がいくつか出ています。
なお、信用保証協会代位弁済後、信用保証協会に求償権が発生すると、
代位弁済となった企業はもちろん、その企業に関係するまったく別の企業においても、
信用保証協会の保証を付けて融資を受けることが困難となります。
例えば、代位弁済となった企業に関係して設立した別の企業
(例えば社長が別甲会社を立ち上げて子どもを社長に立てた場合)、
代位弁済となった企業の社長や保証人であった人が、
社長や役員、株主などに入っている別の企業などです。
知人の会社の保証人になっている社長が、知人の会社が代位弁済となって
自分の会社でも信用保証協会から保証が付かなくなってしまった、という話をよく聞きます。
このようなケースを想定して、知人の会社の保証人になること、
安易に別会社を設立することなどは、十分に気をつけたいものです。
信用保証協会の代位弁済は、
「企業の死」つまり「倒産」を意味するものではありません。
代位弁となっても、その後、経営改善し、銀行や信用保証協会との関係も
正常化している企業は多くあります。
企業経営はあきらめないことが何よりも大事です。